10:鼻血が出るほどラブラブエッチの回【R18】

※18歳未満の閲覧はご遠慮ください※



 白くて楚々として、いい香りがして上品だ。大学の帰りに渋谷の駅地下で買ってきたミニブーケを明智の一LDKの食卓に置き、キッチンの戸棚からてきとうなコップをとりだして机に花を飾る。

 玄関を開けてからひたすら不機嫌に彼のようすを見ていた明智はソファで長い脚を組み、それ、なに、と硬い声を出した。花びらをいじっていた彼はゆっくりと顔を上げる。

「ホワイトデーで売ってたから買ってきた。かわいいだろ?」

「……そういう問題じゃなくてさ、僕君にチョコレートなんてあげてないよね? って話をしてるんだけど」

 明智はあきれたため息をつき、彼はひと月ほど前のことを思い出してわずかにうつむいた。

(あのときの明智、かわいかったな……)

 いや、明智はいつもかわいいが。でもあの日は特別そうだった。めずらしく素直にねだってきたさまを思い出すと思わず顔がぽっと熱くなる。ゆるんだ表情になにかを察した明智は舌打ちした。

「ねえ、聞いてる? あげてもないもののお返しなんかもらっても重いんだけど。僕、世話する気もないし」

「枯れたら捨てていい。明智みたいできれいだから買ってきただけ」

「……はぁ?」

 明智の言うことはもっともで、彼だって今日はチョコをくれた女生徒たちへのお返しを買うつもりで渋谷に寄ったのだ。ただその途中でブーケをみつけて清楚な白さが目についたものだからついでに買ってきた。

 片手で持てるサイズの花束は春らしいスイートピーがひらひらと愛らしく、小ぶりなバラが凛として、そのまわりで小花がひかえめにほほえんでいる。可愛さと気品が感じられるところがいい。

 明智は困惑した表情で彼の手もとの花を見た。

「それが……俺みたいなわけ?」

「そうだ。きれいだろ」

「……そんなにお綺麗な人間じゃない」

 明智は拗ねたような口ぶりで言った。そんなことはない、と彼は首を振る。自分にはこんな風に見えるのだと言い切れば明智は困ったように視線を泳がせて、それから気恥ずかしげに頭をかいた。

「度が合ってないんだよ、その眼鏡」

「まあ、伊達だから」

「……はあ、バカらし」

 明智はそれ以上議論する気をなくしたようすで、そうだと思い出したように顔を上げた。

「そういえば、僕はもらってたんだよね、一応」

「え?」

「チョコレート。……女の子からもらったやつだけどさ」

「……ああ、」

 言われてみれば味見に一つか二つくらい食べていた気がする。明智は部屋着のセーターの腕を組んだ。

「お返しっていっても、考えてもなかったな」

「こっちだってもらうつもりなかったし、べつに、」

「や、……その……そういうことだったら、べつに、しても、いいけど……」

「?」

 明智らしからぬハッキリとしない物言いに彼はきょとんと首をかしげた。明智はちらりと彼を見遣って、わからないのかという目つきをする。彼が素直にうなずけば見えない尻尾をまっすぐに立てた明智に威嚇された。

 なんで怒られているのかわからずじっと見ていればだんだんと明智の白い頬は気まずさに染まってきて、彼はようやく明智の言わんとすることに気がつく。

「え……っ、明智、もしかして誘っ「それ以上言ったら今すぐ殺す」」

 それ以上言わなくても嬉しくて死んでしまうかもしれなかった。明智の方から誘われるなんて初めてだ。

 あんまり嬉しくて眼鏡の下でちょっと泣いて、ドン引きする明智を引っぱってとなりの寝室に連れ立った。

 いつもは殴られたり蹴られたり罵られたりするのに明智は黙ってついてきて、彼がベッドの端に座るとそのとなりにちょこんと腰を下ろす。普段とのちがいに彼は思わずパーカーの胸をおさえた。明智はうんざりした目線を向けたが自分から誘った手前文句を言うことはない。かわりに

「サービスしてやるから感謝しろ」

 と言って、フローリングに下りると彼の前にひざまずく。おどろくあいだに明智はさっさと彼のベルトを外してしまった。

「あっ、明智! あ、ぁの、……ッ!?」

 ジーンズのボタンを外してファスナーを下ろすと、明智は下着の上からそこに触れてやわやわと撫でる。彼は前かがみになって戸惑った吐息をもらした。

「えっ……あ、あのっ、む、無理、しなくても、」

「べつに無理じゃない。……君ができるんだから、僕にできないわけないだろ」

「いや、張り合うようなとこじゃ、……あッ……!」

 悔しげな明智の手に揉まれて彼は声を裏返らせた。余裕なさげな反応に気をよくしたらしく、明智は調子に乗って布越しにぐりぐりとそこを責めてくる。

「っ……ぅ、うぅ……ッ」

 自分でさわるときはこんなことないのに、明智に撫でられると中学生みたいに一瞬で硬く大きくなってしまった。うわ、と明智が眉をひそめる。

「溜まってたの? すごいね、もうこんな……」

「ち、ちがっ……! あ、明智がするから……!」

「あは、かわいいとこあるじゃん。案外君のほうが女の子の才能あるんじゃないの?」

(〜〜〜〜ッックソ、この……ッ!!!!)

 いつもさんざん女みたいな声を上げてよがっている男に言われるのは屈辱だった。それでも文字どおり急所をにぎられているからグウの音も出ず、彼は涙目で明智をにらみつける。

 すっかり機嫌のよくなった明智は濡れた下着を下ろして直接それをにぎった。細い指で輪をつくってゆるゆると上下させる。

「あッ……! ぐ、ぅ……っあけち……ッ」

 慣れない手つきは至極ヘタなのに、そのつたなさがいじらしい。いかにも優等生然とした外見の明智がうっすらと目もとを興奮に染めて似つかわしくないそれをいじいじといじっているさまがなんとも言えずにエロかった。

「ねぇ、そんなに気持ちいいの?」

「う……っ、あ、うぅ、き、きもちいぃ……っ」

「ふうん、……じゃあ、これは?」

 明智は身をかがめて、おもむろにそれを口に含んだ。突然のことにギョッとして彼は声を上げる。明智は目をまるく見ひらいて身体をこわばらせた。

「!!!!……ッあ、ぐ、ぅそ……っお、おま……ッ」

 彼は羞恥で今度こそ死にたくなった。口に入れられただけで出してしまった。初めて風俗店に行った大学生みたいだ。否、彼は風俗は行ったことがないからわからないが。

 明智はゴホゴホとむせこんで粘ついたそれを吐き出していて、彼はあわててサイドボードからティッシュをとった。しばらく苦しげに喉をやり、汚れたティッシュをまるめて明智ははあっと息を吐く。そうしてジロリと彼をにらみ上げた。

「君ねえ、たしかにサービスしてやるとは言ったけど、これはないでしょ、これは」

「……ご、ごめんなさい」

 先生に怒られたような気分で彼はしょんぼりと肩を落とす。明智はブスッと顔に皺をよせた。

「全然反省してないだろ、……これ」

「うう……」

 脚のあいだではまた半勃ちになってしまっていて、彼は返す言葉が見つからなかった。

 いつになく明智に押されてしょぼくれていると、しかしティッシュを放り捨てた明智はなにを思ったのか、またそれを口にくわえてねぶりだす。

「えっ! あ、明智?」

「……もっと大きくしないと、入んないだろ……」

「っ……!!」

 彼はぎゅっと両手でシーツを握りしめた。今度こそ情けない姿は見せられないと思って与えられる刺激に抵抗する。

 明智は床に膝をついて小さな頭をゆっくりと上下させた。長い髪をじゃまくさそうな仕草で耳にかけ、かたちのいい唇をいっぱいにひらいてくわえこむ。

 なだめすかしてなんとかお願いして口でしてもらったことは前にもあったが「噛みちぎるぞ」と言う目が本気だったので回数はそれほど多くない。それでも今日の明智はていねいに舌を這わせてなんとか歯を立てないよう気にしているようすだった。

 さっきよりは我慢ができたがぬるついた粘膜に包まれていると尻のあたりがどうにもソワソワしてきて彼はごくりと唾を飲む。

 眼下の明智は無意識に腰をゆるく左右に振っていて、彼はとうとう堪えきれずに明智をベッドへ持ち上げた。おどろく身体を押し倒して馬乗りになり、性急に服を脱がしてすべらかな肌に触れる。

「あ……っ、ちょ、ちょっと、もう、なに、急に……っはぁ、」

 明智は不満げに漏らしたが慣れた手があちこちを撫でるとおとなしくなって、自分からおずおずと身をよせてくっついてきた。

 両手で気持ちよくさせると甘く鳴いて彼の肩に歯を立ててくる。ときどき犬歯にやられて傷ができることもあったが明智が興奮しているのが伝わってくるから彼はこれが好きだった。かわいい男に甘噛みされながらローションをたらして明智のお腹のあたりで水音を立てる。

「あっ……はぁっあッ……んん、ふぅ……っ」

 明智は大きなひとみをすっかりとろんとさせていた。さっきまで偉そうにしてたくせにもう別人みたいだ。腰を浮かせてもっともっとと無言でねだってくる。

 片手で胸を撫でながら男の固い体を慣らすと明智はくぐもった吐息をもらして彼の手が動きやすいようにベッドの上で横向きになった。自分から誘ったせいかいつになく積極的な仕草にときめいて目の前がクラクラする。

 彼が熱っぽい息を吐きながら触れていると、感じ入っていた明智はふと、えっ、と声を上げた。

「?」

「いや、君……鼻血が」

「え?……あ」

 あんまり頭がカッカすると思ったら片方の鼻からぽたりと垂れ落ちて明智のうすい腹に一滴の赤い染みができた。彼はつかのま固まって、でもやっぱり我慢が効かなくてそのままする。明智は慌てて身をよじった。

「ちょっ! ちょ、う、嘘でしょ!? やめてよ、シーツについたらシャレになんな……ッんん!」

 頭に血がのぼったまま明智にキスをすると、明智は涙目で彼をにらんで不自由な腕をなんとか動かしてティッシュの箱をとった。彼の胸にぐい、と押しつけてくる。

「っはぁ……もう、わかったからとりあえず拭けよ、ほら、……続けていいから」

 あきれた明智になだめられてとにかくティッシュで鼻の頭をおさえて上を向くと、明智は身を起こして彼の腹の上に乗った。

「……動いてやるから、シーツ、絶対汚すなよ」

 彼は顔に手を当てたままこくりとうなずいたが、内心あんまり自信はなかった。喉のあたりに鉄の味を感じながら、明智が腹の上で体勢を変えて自分のそれにゴムをつける仕草をじっと見つめる。

 今からめちゃくちゃされるために明智が自分からそんな用意をしているのだと思うとそれだけで鼻からまたこぼれそうになった。

 言いつけを守って強く顔をおさえていると、明智は緊張した面持ちで彼の腹をまたぎ、下腹に手をついてそっと腰を下ろしてくる。

「あっ……んぅ……ちょっと、大きくしないでよ……」

 無理ですとしか言いようがなかったが彼はごめんとあやまった。明智にはしょっちゅう怒られるのでとりあえず毎回てきとうにあやまっている。

 明智は頬から汗をたらしてなんとかぺたりと腰を下ろした。悩ましげな息遣いが色っぽい。

「あ……っあー……っ……きもちぃ……」

 明智はゆっくりと体を前後に揺すって息を詰めた。彼が動けないから今日はまるで明智が気持ちよくなるのに彼のそれを使っているみたいだ。

「んっ、あっあ、……はぁ、ここ……いい……」

「ッ……あ、明智、も、もうちょっと、早く……」

「はぁ……っしょうがないな、早漏野郎め、」

 早漏でもなんでもいいからもうおかしくなりそうだ。仰向けになった彼がもどかしく腰を押し上げると、きゃんと鳴いた明智は腹の上で飛び上がってすとんと彼の上に落ちた。

「ッ!! あ、ぁッ……! はぅ……っ」

 お腹の深いところまで突き刺さって明智は目の端から大粒の涙をあふれさせた。薄暗い寝室できらきらときれいだ。彼はよけいに煽られて下から明智を強く突いた。

「あ! っば、バカ! ゃめっ、ひゃあッ!」

 明智はガクガクと身体を震わせて彼の胸に両手をついた。泣きながら彼に合わせて腰を振って、高く鳴いてびちゃりと彼の腹に出す。

「だっだめ、だめ……ッ! うぅっ……!」

 明智はめちゃくちゃに喘いで彼の上に倒れ、彼は固まったティッシュを外して明智にキスをした。無防備な唇が吸い付いてくるのに応えながら明智のわき腹をつかんで上下させる。

「……ッ!! ア、ぁ、ま、まって、てば……っ! も、っもぉ、くるし……ッ!」

 彼は夢中で明智をつかんで揺すった。下腹部を飲み込まれるような感覚に低くうめき、あごをそらしてゴムに出す。

 明智は小きざみに震えて彼の首をぎゅうと抱き、彼は荒く息を吐いて明智の背を抱きしめた。汗ばんでしっとりした肌が心地よくてやわやわと撫でる。気持ちいいのか明智は小さく声をもらした。余韻にひたりながらのろりと顔を起こし、彼の顔をのぞきこむ。

「鼻、もう平気?」

「え? ……ああ、おさまったみたいだ」

「ん。そっか」

 鼻血も止まったしいつまでもこの体勢ではつらいだろうと思って彼が身を起こそうとすると、しかし明智はゆるく首を振った。

「……もうちょっと、このまま」

「そうか?」

「うん」

 明智はそう言って彼の首すじにやわらかな頬を押しつける。汗とシャンプーのまじった香りを感じながら、彼はぼうっと明智をみた。

 バレンタインの前後あたりからだろうか。明智はずいぶんと甘えてくれるようになった気がしていた。以前の明智なら彼を誘うことは絶対になかったし、こんなふうにぺたぺたと自分からくっついてきたりはしなかっただろう。

 あれから結局店にあったカードの裏に手書きでスタンプ帳を作ったら明智はそれを持って帰ったので今は二、三ポイントがたまっている。二十たまったらデート券だ。実際に明智がそれを使うかは知らないがスタンプを押してやると心なし嬉しげにカードを見つめる横顔がかわいい。

 胸がきゅんとしてやわやわと明智の尻をもんでいると、明智は不機嫌そうに身を起こした。怒られるのかと思って彼が手を止めればもう一回したいと消え入りそうな声が言う。彼は思わずふは、と笑った。

「ッ! な、なんだよ! い、いつもそのくらい、お前、したがるだろ……ッ!」

「……いや、やっぱり、さっきの花には似てないかもと思って」

「はぁ!? なんだよそれ!? お前が勝手に買ってきて勝手にそう言ったんだろうが!!」

 そうだけど、そうじゃないかもと思ったのだ。だって実際の明智はもっとスケベでもっとかわいい。彼は笑って明智を押し倒した。明智はギャンギャンとうるさく文句を言って、数分もすると、しずかになった。

0コメント

  • 1000 / 1000