2024.01.25 13:52お題04:『怪盗服』お互いの怪盗服が大好きな主明というお題をいただきました ひと振り、ふた振り、斬撃が空を切る。剣と剣はときどきぶつかって、メメントスの薄闇に鋭い金属の音が木霊した。 明智はすばやく後ろに下がって一旦間合いをとり、対峙する男、怪盗団のリーダーをねめつける。 濁った赤い照明がぼんやりと照らす廃駅のような広間で、彼は背景に溶けこむようにしてたたずんでいた。 明智は黒い仮面をかぶり直し、じりじりと横に数歩ゆきながら彼との距離をはかる。「フン、まだ息は上がってないみたいだね」 彼は小さくうなずいた。白銀の仮面がかたむいてキラリと反射する。「このていどじゃバテない。明智もだろ」 挑発するような声音に明智はカラカラと笑った。仮面をかぶったときの彼はやたらと強気になる。...
2024.01.17 10:35お題03:明智がとろとろになる話【R18】※18歳未満の閲覧はご遠慮ください※主人公のが長くて明智がとろとろになっちゃう話というお題をいただきました。本編数年後20代で同棲している主明のお話です。 バイカラーのマフラーに細身のセーター、襟に刺繍の入ったシャツ、ストレッチがよく効いた黒のパンツ。新宿のメンズ館で買った冬物を、彼はレジの横でひとつの紙袋にまとめた。 かたわらで待っていた明智はトレンチコートの胸ポケットにスマホをしまって、彼の腕をかるく引く。「暗くなる前に帰ろう。夜、冷えこむみたいだし」「ああ」 年が明けても日が落ちるのはまだ早かった。建物を後にして大通りに出ると、背の高いビル群の影はもうほとんど一帯を覆っている。体を震わせて土曜の人波にまぎれ、二人はなるべく西日の差す道を選んでJL...
2024.01.16 08:37お題02:『オメガバース』 カタカタと鍋の揺れる音に明智は顔を上げた。十四平米のゆったりしたリビングで、向こうのキッチンに立った彼が夕飯を作っている。 窓辺の仕事机でパソコンを切り、明智はセーターの肩をゆるく回して立ち上がった。午後いっぱい浮気調査の報告書をまとめていたのでだいぶ凝ってしまっている。「終わったのか?」 コンロから顔を上げた彼が声を張ってたずねた。明智はいささかくたびれた表情で首を縦に振る。 失くしものとか浮気調査とか、タレントをしていた頃から比べるとまるでつまらない仕事ばかりだ。 それでも数年前の獅童の件でもうおおっぴらに探偵業はできないから、今はウェブで完結する業態に移行してちまちまと小さな仕事で食い扶持を稼いでいる。こころ躍るような内容ではなかったが、毎日食...