2024.08.01 10:38『お姉さん』小学生の明智がお姉さんに誘拐されて過ごす話モブ♀+明智(全年齢向け)です 七月のその日、学校は夏休み目前の短縮授業で、三時間目を終えたぼくはのらりくらりと家路を歩いていた。両手にアサガオの鉢を持ち、宿題のドリルと持ち帰りの教科書でランドセルはずしりと重い。けれど気が重い理由は別にある。 夏休みはきらいだ。一年前、小学一年の夏はさんざんだった。叔母さんは三食ぼくと従兄弟の食事を世話しないといけないからいつも不機嫌で、従兄弟がさわがしくするので叔父さんはいつも疲れてイヤそうな顔をしてた。ぼくはといえば、家にいるとめんどうな思いをするので、昼間はなるべく図書館へ行っていた。「あら、吾郎くんおはよう、毎日えらいのね」 司書のお姉さんとはさすがに顔見知りになって...
2024.08.01 10:32R-18『元カノ』地元に戻った高三の主人公が元カノに再会する話※主明前提。元カノによる逆レイプ表現を含みます。(あーあ。地方公務員って、やっぱり安定職だよね) にぎやかな夕方の駅前であたしはため息をつく。 アプリで知り合った相手と初アポの予定だったのに、たった今ドタキャンの連絡が届いたところだった。仕事帰りに化粧し直してターミナル駅まで出てきたのに、完全なムダ足だ。 二、三週間前ケンカして別れた元カレはやっぱり惜しいことをした。資格持ち公務員といったら田舎ではモテモテの人気職だ。あたしは一応正社員だけど薄給の事務職で、アプリでマッチする相手も元カレと比べるとイマイチだった。(最近どうしてるの、……と) 復縁の気配がないかどうかメッセージで元カレに探りを入れ、てきとうに牛...
2024.03.15 16:18雨のせいだね 秋雨がそぼ降る九月の晩だった。カランと音を立ててルブランの戸を開けた明智は制服のワイシャツを胸まで濡らしていて、客が帰ったテーブルを拭いていた彼はポーカーフェイスをくずして布巾を取り落とした。カウンターの奥に立った店主は彼と明智と壁時計を見比べる。「おい、友だちに服貸してやれ。今日はもう店じまいにすっから」「いいのか? ずいぶん早いけど」「この雨じゃ客も来ねえだろ。明智くんだったよな? ……くつろいでってもらって構わねえからよ」「……すみません。傘を忘れちゃって、すこし、雨宿りさせてもらおうと思って」 明智は濡れた頬でひかえめにほほえんだ。惣治郎は閉店の準備を始め、床にしゃがんだモルガナは店の残りのカレーを夕飯に食べはじめる。 突然のことにおどろきな...
2024.02.21 11:03ネコの日 二月二十二日、日曜日。 明智が目を覚ますと、となりで寝ていたはずの彼はにゃんと、ネコになっていた。 ネコといってもモルガナみたいに毛の生えた本物のそれではない。ドンキかどこかで買ったような黒い耳を頭につけ、部屋着のスウェットのズボンに安全ピンで尻尾を留め、黒いチョーカーを首輪に巻きつけた成人男性である。はっきり言って地獄だった。「ニャニャニャ、ニャンニャ」 衣装はてきとうだったが本人はすっかりなりきったつもりらしく、彼はそう鳴いてベッドで明智に懐いてくる。朝から最悪の気分で明智は昨晩の記憶を振り返った。「ネコの日だよな、明日」 ベッドで本を読む明智に彼が言った。面倒くさげにミステリー小説から顔を上げ、明智はとなりに寝そべる彼をにらむ。「言っておくけど...
2024.02.19 15:10女装の明智が主人公の大学に来る話 一般教養の講義が終わると、彼はそわそわとスマホを開けた。授業を受けていた生徒たちは昼食に何を食べようか話しながら教室を出てゆき、彼とよく話す男子数人も親しげにやってくる。「なあ、今日五号館のカフェでいい? 冬限定のローストビーフ丼終わるから最後に食いたくて」 彼はあわてて新着のメッセージから顔を上げる。「あー……ごめん、えっと、今日は、」 そのときふと、教室の入口で彼の名を呼ぶ声があった。彼はワッと椅子から立ち上がる。机に広げたノート類を雑に引っつかむと、階段を駆け下りて声の主、茶髪のきれいな女子のもとへ走る。教室内はザワ、と沸いた。「え、なに、もしかして……カノジョ?」 先ほどの男子に遠くから聞かれ、彼は元気よくうなずいた。「昼、弁当持ってきてもら...
2024.02.16 09:40明智が花屋に来る話 あれ、と驚きをにじませた声に、彼は手もとの花から顔を上げる。バイト先の花屋のエプロンで手をふいて振り返ると、駅地下の通路には見慣れた顔、明智が立っていた。目と目が合い、彼もあ、と声をもらす。制服姿の明智はくしゃりと笑った。「君、ここで働いてたんだ?」 彼はかるく頭をかく。思いがけぬところを知り合いに見つかるというのはなんだか恥ずかしい気分がするものだ。相手が明智ならなおさらだった。春先に出会った年上の名探偵のことを、彼はすっかり意識している。 彼がいつになくまごついていると、奥のレジで書き物をしていた女性の店長はワッと弾んだ声を上げた。「あの、探偵王子の……! 明智くんですよね、よくテレビに出てる」 探偵王子は端正な顔に苦笑を浮かべた。店長はきゃあき...
2024.01.26 10:41【R15】一日だけ探偵王子の明智とデートする話 鋭い痛みを感じて彼は目をさました。寝ぼけまなこでどこが痛いのだろうとまばたきする。起き抜けの脳が自宅のマンションのベッドを認識して、次いで、ひたいがジンと熱く痺れる感覚があった。長袖のパジャマの裾をのろのろ持ち上げおでこを押さえると、左手からツンとした声がある。「おい、いいかげん起きろよな」 まだ半分ほど眠っていたが、彼はおもわず頬をほころばせた。横を向けばベッドに腰掛けた恋人がこちらを見下ろしている。ほとんど無意識にカーディガンの腰へと手をのばせば、躾のわるい犬を叱るような手つきでパシンと叩かれた。「う……いだい……明智……」 明智はふん、と胸をそらす。「十時まで寝てるほうがわるいんだろ、……せっかく休みなのに」 休みという言葉に彼はようやっといく...